導入前の課題
- IP監視カメラソリューションの導入
- 限られた予算でIT化を推進したい
- 医療機関に求められるセキュリティを担保したい
導入システム
- RS815RP+
導入メリット
- 導入コストの大幅削減
- アドオンソフト活用によるシステム構築
- 医療機関に求められるセキュリティの実現
「病院に求められるセキュリティを担保したIT化を、限られた予算内で推進するという難しい課題をクリアするうえで大きな役割を果たしたのが、Synology NASが提供する多彩なアドオンソフトでした」
医事課 課長代理
富田 明男氏
※感染拡大防止の観点から、取材はマスク着用のお願いとなった。
ゆっくりと流れる時間の中、心の病を癒す精神科病院
医療財団法人 緑雲会 多摩病院は、80年以上の歴史を持つ東京・八王子の精神科病院。宅地化が進んだ現在からは想像は難しいが、設立当時、周囲は雑木林や畑に囲まれていたという。その環境は統合失調症をはじめとする、心の病のリハビリテーションに大きな役割を果たしてきた。統合失調症の治療が入院から通院に変わる中、これまで長期療養を軸に医療サービスを提供してきた同院の役割も大きく変わりつつあり、急速に高まる認知症の受け入れ体制の拡充など新たな取り組みを開始している。
それと並行して進むのが、IT導入に向けた取り組みだ。長期療養を中心とした医療では、医事業務にスピードが求められることはそう多くない。そのため同院のIT導入の状況は、数年前まで診療報酬請求を行う医事会計システムや薬剤管理システムなど、スタンドアローンのものに限られていた。この状況を大きく変えたのが、新病棟「緑の棟」竣工から間もない2017年に導入された1台のSynologyNASだった。当直スタッフの負担軽減を目的にした監視カメラの導入検討がきっかけとなる。医事課 課長代理の富田 明男氏は経緯をこう振り返る。
「IPカメラとサーバの組み合わせであればサーバをそれ以外の用途に活用できると考えたことがすべての始まりでした。将来的な展開も含めて要件をまとめ、以前から知るKSGさんに相談したところ提案されたのがSynology NASでした」
採用のポイントは扱いやすさネットワーク認証にも活用
富田氏は複数の競合NAS製品を比較検討したうえで、Synology NASの採用を決断。統一感があるWebベースのUIが決め手だったという。新病棟入口に設置した監視映像は、門扉破損の原因究明などに貢献しているが、導入効果はそれだけではない。同院は現在、Synology NASをネットワーク・情報系システム構築の基盤としても活用している。こうした運用を可能にしたのが多彩なアドオンソフトの存在だ。
まずはネットワーク構築における役割から見ていこう。医療機関のLANには、個人情報を扱う病院情報システム(HIS)と一般業務用ネットワークを分けて考えることが求められるが、ネットワークの二重構築は、導入コスト、運用コスト共に負担が大きくなる。その解決策となるのがディレクトリサービスだ。
同院は、アドオンとして提供されるLDAP ServerとRADIUS Serverの組み合わせで認証システムを構築。持ち込みデバイスの利用をはじめとした運用の利便性とHISの高度なセキュリティの両立を実現している。またLAN構築による、Synology NASのファイルサーバーとしての活用も導入効果の一つ。なお、ネットワークの構築は設計・構成図作成から配線の施工まで富田氏自身が手掛けている。
多彩なアドオンが実現した業務に対応したシステム構築
Web Stationによる簡易Webサイト構築も注目したいポイントだ。同サイトは各種告知や回覧、研修動画の共有に大きな役割を果たしている。また、会議のペーパーレス化に貢献するSynology Drive Serverにも注目したい。会議資料をあらかじめSynologyDriveのファイルポータルに上げておけば、タブレット端末から簡単にアクセスすることが可能になった。Synology Chatとオープンソースのビデオ会議アプリケーションによる、リモート会議システムの活用にも驚いた。その特長は、一般的なWeb会議システムと異なり、ローカルですべてが完結する点にある。
「用途として想定したのは、各部門の代表者による全体会議のリモート運用でした。医療機関の場合、テレワークを考慮する必要がない一方、システ ムには高度なセキュリティが求められます。ファイアウォールの内側で完結するこの仕組みは、セキュリティ面の安心感につながっています」
Synology Chatは院内連絡用チャットのほか、Web Hooksとの統合による、外部Webサイトと連携した熱中症危険度配信にも活用されている。精神科のリハビリでは散歩が大きな役割を持つ。スタッフはこの配信を参考に散歩の可否を検討しているという。
限られた予算内で何を実現し、何を諦めるか。IT管理者は常にその線引きが求められる。SynologyNASに付属するアドオンソフトをフル活用した同院の事例は、アイデア次第で線引きが大きく変わることを示している。富田氏は最後にこう言葉をまとめた。
「Synology NASなしのシステム構築コストは試算していないのですが、信じられないほどコストは圧縮できていると思います」